検察、許すまじ!
この本は、正直言ってあまり売れないかもしれないと思っています。しかし、出版人の良心として、赤字覚悟で、あえて出す決断をしました。
それは、この事件の真相――というより検察の真の姿を一人でも多くの国民に知って欲しいと思ったからです。いや、知らせなければいけないと強く思っているからです。とくに裁判官のみなさんには、ぜひとも読んでいただきたいと考えています。
検察が独自捜査に手を染めると、どんなふうにして“事件”がつくられていくのか。
厚生労働省の局長だった村木厚子さんが逮捕された郵便不正事件が他と際だっているのは、まったく何の事実もないところに「罪」がつくりあげられたことでした。
「東京(地検)が西松建設事件で小沢(一郎代表=当時=)をやれなかったから、大阪で(別の民主党幹部を)やるぞ! そうすれば手柄になる」
とばかりに、“公益性”のカケラもない理由で捜査に着手し、さんざん税金を浪費したあげく結局、何の証拠も見つけられず、このままでは事件が政治家に伸びない、つまり失敗捜査に終わりそうだと見るや、
「政治家がダメなら高級官僚をやるしかないわ!」
と、検察としての体面を保つだけのために、無辜の村木さんがターゲットにされ、彼女を“罪人”にするための調書が、あの手この手を使って、次々ねつ造されていきました。しかも、村木さんが逮捕された理由は、やっていないことを「やっていない」と真実を述べたからでした。
なぜ、こんな信じられないことが起きるのでしょう。
先輩記者たちの話を聞くと、かつての検察はここまでデタラメでなかったと口を揃えます。文字通り「正義の具現者」として輝いていた時期もあったといいます。それがいつからこんなふうに劣化してしまったのか、私にはわかりません。ただ、いまあるこの現実を知って欲しいと思うだけです。
私たちの仕事は歴史を記録することにもあります。今回の捜査を後世の人たちはどう評価するのか。そのことのためにも本書を世に送り出す意義があると感じています。
二〇一〇年八月二〇日
週刊朝日編集長・山口一臣
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