拉致旅行 インディーズ文庫立ち読み版|書籍線上App不用買

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【免費書籍App】拉致旅行 インディーズ文庫立ち読み版-APP點子

疲弊しきった現代に生きる若者の

「脆さと弱さ」「図太さと強さ」を感じる。

 定時制高校へ通う中山裕介は、中三の時に「うつ病」と診断された。自己顕示欲が強く、懐っこい性格が仇となり、親友に「ウザい!」と言われて以来、心に蓋をし、孤独な日々を送っていた。うつ病を治す事よりも薬への依存度を強め、遂には死に行く人を羨望するようになる。

 都内で風俗嬢として働く渋谷文夏。明るい性格だが、五歳の時に両親が離婚、そして高三の時に中絶し、高校を退学処分となった過去を持つ。

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 二十歳を機に、裕介と同じ定時制高校へと再入学した文夏は、独りでいる裕介に声を掛ける。その後も興味津々の文夏に対し、鬱陶しがる裕介だが、次第に文夏のペースに呑まれていく。

 文夏は十五年ぶりの帰郷に、裕介を『拉致』する事を企て、実行された。激怒する裕介だが、文夏の開き直った態度に怒りを通り越して呆れ返ってしまう。

 しかし、文夏の過去を知るにつれ、裕介の心境や考え方に、徐々に変化が生じていく……。

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「あ、そういうエンディングなの?」と、良い意味で裏切られたというのが第一の感想だ。

 登場人物の感情の起伏を淡々と、また切々と描く著者の腕前は「さすが」の一言に尽きる。若い男女が“過去”や“現在”を吹っ切ったり克服したりする姿が、初々しくもリアルに表現されている。がしかし、甘ったるい展開ではないところが「さすが」なのだ。

 現代の若者の「脆さと弱さ」「図太さと強さ」といった心情を、的確に描いた作品といえるだろう。

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